コーヒーが好きだというと、どんなコーヒーを飲んでいるのか聞かれることがあります。
お気に入りのコーヒー豆があって、自宅にはミルやドリッパーがあり、毎朝時間をかけてコーヒーを淹れている。そんなイメージを持たれることもあるのではないでしょうか。
もちろん、そういう楽しみ方も素敵だと思います。豆の産地や焙煎の違いを知り、抽出方法を工夫しながら、自分好みの味を探していく。コーヒーという飲み物には、それだけの奥深さがあります。
ただ、最近少し思うことがあります。
コーヒーが好きだからといって、必ずしも本格的なコーヒーにこだわる必要はないのではないでしょうか。
インスタントコーヒーが好きでもいいですし、むしろインスタントコーヒーだからこそ楽しめることもあります。
高級な豆を買うことだけがコーヒーの楽しみではありません。スーパーで買えるインスタントコーヒーにも、十分にこだわる余地があると思うのです。
1. コーヒー好きには、どこか本格志向を求められる雰囲気がある
コーヒーの世界を調べていると、本当にいろいろな情報が出てきます。
豆の産地、品種、焙煎度、挽き方、抽出温度、蒸らし時間。さらに器具によっても味が変わり、突き詰めていけば際限がありません。
コーヒーを趣味として楽しむのであれば、こうした違いを知るのも面白いものです。
ただ、情報を知れば知るほど、なんとなく「ちゃんとしたコーヒーを飲まなければいけない」という気持ちになってしまうこともあります。
せっかくコーヒーが好きなのだから、豆から挽いた方がいい。インスタントでは本来の味を楽しめない。そんな考え方です。
しかし、これは少し不思議な話でもあります。
コーヒーが好きだというのは、あくまでもコーヒーという飲み物が好きだということです。
必ずしも、その製造方法や抽出方法に詳しくなければいけないわけではありません。
ラーメンが好きな人が、必ずしも自宅でスープから作るわけではないのと同じです。
インスタントラーメンにはインスタントラーメンのおいしさがありますし、専門店のラーメンとはまた違った楽しみ方があります。
コーヒーも、それでいいのではないでしょうか。
2. インスタントコーヒーには、インスタントならではのおいしさがある
インスタントコーヒーは、一般的に手軽さや安さで評価されることが多いように感じます。
お湯を注ぐだけで完成する。片付けが簡単。忙しい朝にも飲みやすい。
確かに、これらは大きな魅力です。
けれども、インスタントコーヒーの価値はそれだけなのでしょうか。
私は、インスタントコーヒーには独特のおいしさがあると思います。
豆から淹れたコーヒーとは香りの出方も違いますし、味のまとまり方にも違いがあります。製品によっては、どこか親しみやすい、いつ飲んでも落ち着くような味わいがあります。
もちろん、すべてのインスタントコーヒーがおいしいというわけではありません。好みに合わないものもあります。
それでも、インスタントコーヒーならではの風味を好きになることは、十分にあり得ると思うのです。
何でも本格的なものが上位で、手軽なものが下位というわけではありません。
喫茶店のコーヒーが飲みたい日もあれば、自宅でいつものインスタントコーヒーを飲みたい日もあります。
この二つは、必ずしも競争するものではないはずです。
3. インスタントコーヒーの銘柄を比較するのも立派な趣味になる
考えてみれば、インスタントコーヒーにも相当な種類があります。
スーパーの売り場を見ても、昔からある定番商品から、香りや味に特徴を持たせた商品まで、さまざまなものが並んでいます。
同じインスタントコーヒーでも、実際に飲み比べてみると印象は変わります。
苦味が強いもの、酸味を感じるもの、後味がすっきりしているもの。ミルクとの相性がいいものもあれば、ブラックで飲んだ方が好みに合うものもあります。
こうした違いを探すだけでも、十分に面白いと思います。
たとえば、普段飲んでいる銘柄から別の銘柄に変えてみる。
最初はいつもの方がおいしいと感じても、何日か飲んでいるうちに新しい銘柄の良さに気づくことがあります。
反対に、いろいろ試してみた結果、結局は昔から飲んでいた商品に戻ってくることもあるでしょう。
それもまた、自分の好みがわかったということです。
コーヒーの飲み比べというと、専門店でさまざまな豆を購入することを想像しがちですが、インスタントコーヒーだけで飲み比べをしてもいいのです。
値段が高いものが必ずしも自分にとって一番おいしいとは限りません。
比較的安い商品が、意外なほど好みに合うこともあります。
そういう発見ができるところに、インスタントコーヒーの面白さがあると思います。
4. お湯の量や温度を変えるだけでも楽しみ方は広がる
インスタントコーヒーは簡単に作れるからこそ、工夫する余地が少ないと思われがちです。
しかし、実際にはそんなこともありません。
同じインスタントコーヒーでも、粉の量を少し増やすだけで味の印象は変わります。お湯を多めにすれば軽やかな飲み口になりますし、少なめにすれば濃い味を楽しめます。
お湯の温度を変えてみるのも一つの方法です。
熱いお湯で淹れたときと、少し温度を下げたお湯で淹れたときでは、飲む瞬間の香りや苦味の感じ方が変わる場合があります。
もちろん、インスタントコーヒーには抽出の工程がありませんから、豆から淹れるコーヒーと同じような変化が起こるわけではありません。
それでも、飲み方によって印象が違うことは確かです。
また、ミルクを加えるのであれば、その量にもこだわれます。
牛乳をたっぷり加えてカフェオレにしてもいいですし、少量だけ加えて苦味を残してもいいでしょう。
夏にはアイスコーヒーにする楽しみもあります。
少量のお湯で濃く溶かしてから氷を加えると、手軽に冷たいコーヒーが作れます。使う銘柄によっても、仕上がりは変わってきます。
こうして考えていくと、インスタントコーヒーだから工夫できないということはありません。
むしろ、準備が簡単だからこそ、いろいろな飲み方を気軽に試せるともいえます。
5. 高いコーヒーを飲むことと、コーヒーを楽しむことは別の話
コーヒーを趣味にすると、どうしても道具や豆にお金をかける方向に進みやすいところがあります。
高性能なミルを買う。評判のいいドリッパーを試す。少し高価な豆を取り寄せてみる。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
違いを楽しめるのであれば、お金をかける価値は十分にあると思います。
ただ、コーヒーの楽しさがお金をかけた分だけ大きくなるかというと、必ずしもそうではないでしょう。
数千円の豆を買って楽しむ人もいれば、スーパーで購入したインスタントコーヒーを毎日おいしく飲んでいる人もいます。
そのどちらがコーヒーを深く楽しんでいるのか、簡単には決められません。
そもそも、飲み物の価値は味だけで決まるものでもありません。
朝起きて最初に飲む一杯。
仕事の途中で少し休憩するときの一杯。
夜に落ち着いた気持ちで飲む一杯。
同じコーヒーでも、飲む状況によって感じ方は変わります。
たとえ安価なインスタントコーヒーであっても、その時間が気に入っているのであれば、十分に満足できるはずです。
高級な豆を使ったコーヒーにしか価値がないと考えてしまうと、こうした身近な楽しみを見落としてしまうような気がします。
6. 毎日飲むものだからこそ、気楽さにも価値がある
コーヒーを日常的に飲んでいると、いつも特別な一杯を求めているわけではないことに気づきます。
今日はとびきりおいしいコーヒーを飲みたい、という日もあります。
しかし、それ以上に、ただコーヒーが飲みたいという瞬間も多いのではないでしょうか。
そんなとき、インスタントコーヒーは本当に便利です。
お湯を沸かして、カップに粉を入れるだけです。
器具の準備も後片付けもほとんど必要ありません。
しかも、いつもの銘柄を使えば、おおむね自分が想像していた味になります。
この安定感は、意外と大きな魅力です。
豆から淹れる場合には、挽き方や抽出の仕方によって味が変わることがあります。それは面白さでもありますが、毎回こだわって淹れることを負担に感じる日もあるでしょう。
一方、インスタントコーヒーであれば、特別なことをしなくても普段通りに楽しめます。
コーヒーを飲むために頑張らなくてもいい。
こうした気楽さは、毎日飲むものだからこそ大切なのではないかと思います。
7. 本格的なコーヒーとインスタントコーヒーを使い分けてもいい
そもそも、豆から淹れるコーヒーが好きな人は、インスタントコーヒーを飲んではいけないのでしょうか。
もちろん、そんなことはありません。
休日にはお気に入りの豆を挽いて、時間をかけてコーヒーを淹れる。
一方で、平日の朝はインスタントコーヒーで簡単に済ませる。
これは何も矛盾していないと思います。
むしろ、どちらの良さも知っている方が、コーヒーの楽しみ方は広がるのではないでしょうか。
専門店で飲む一杯と、自宅で飲むインスタントコーヒーでは、求めているものが違う場合もあります。
香りや風味の複雑さをじっくり味わいたいときもあれば、慣れ親しんだ味で気持ちを落ち着けたいときもあります。
どちらか一方を選ばなければいけない理由はありません。
そして、インスタントコーヒーが好きだからといって、コーヒーに詳しくないということにもならないはずです。
本格的なコーヒーの良さを理解したうえで、あえてインスタントコーヒーを選ぶ人がいても不思議ではありません。
味の好みというのは、知識の量だけで決まるものではないからです。
8. インスタントコーヒーを極めるという楽しみ方があってもいい
個人的には、インスタントコーヒーだけを深く追いかけてみるというのも、なかなか面白い趣味になるのではないかと思います。
いろいろなメーカーの商品を購入して飲み比べてみる。
同じメーカーのシリーズを比較してみる。
ブラックで飲んだ場合と、ミルクを加えた場合の違いを確かめる。
自分の中で、おいしいと思った銘柄をランキングにしてみるのも面白そうです。
しかも、こうした楽しみ方であれば、大がかりな道具をそろえる必要がありません。
日常の買い物の延長で、少しずつ新しい商品を試すことができます。
もちろん、飲み比べるために無理をして大量に購入する必要もありません。今あるものを飲み終えてから、次は別の銘柄にしてみる。それくらいでも十分です。
何より面白いのは、身近な商品に自分なりのこだわりが生まれることです。
誰もが知っている定番のインスタントコーヒーでも、自分なりに飲み方を工夫して、お気に入りの味を見つけることができます。
高級な豆の知識をたくさん持っていることだけが、コーヒーへのこだわりではありません。
インスタントコーヒーに詳しいというのも、立派なこだわりだと思います。
9. コーヒー好きという言葉を、もっと自由に考えたい
コーヒーは本当に奥が深い飲み物です。
調べれば調べるほど、知らなかった世界が見つかりますし、追求しようと思えば、いくらでも先があります。
ただ、その奥深さは、必ずしも高級な豆や専門的な器具の世界だけにあるわけではないと思います。
毎日飲んでいるインスタントコーヒーにも、まだ知らない種類や味があります。
ほんの少し飲み方を変えるだけで、いつもとは違う発見があるかもしれません。
それに、そもそもコーヒーを楽しむために、何かを極めなければいけないわけでもありません。
好きなものを、好きなように飲めばいいのです。
豆から挽いたコーヒーが好きな人もいれば、缶コーヒーが好きな人もいます。コンビニのコーヒーを毎日楽しみにしている人もいるでしょう。
そして、インスタントコーヒーが一番落ち着くという人もいるはずです。
どれもコーヒーの楽しみ方の一つです。
コーヒー好きという言葉を、必要以上に難しく考えなくてもいいのではないでしょうか。
まとめ:好きなコーヒーを好きなように飲めることが一番いい
コーヒーが好きになると、ついもっとおいしいもの、もっと本格的なものを求めたくなります。
それ自体は自然なことですし、新しい味を知る楽しみは確かにあります。
しかし、それと同時に、身近にあるコーヒーのおいしさも大切にしたいものです。
インスタントコーヒーだからといって、妥協して飲んでいるとは限りません。
インスタントコーヒーが好きで、あえてそれを選んでいる人もいます。
銘柄にこだわったり、粉の量を調整したり、飲み方を工夫したりすることだってできます。
それも十分にコーヒーを楽しんでいるということだと思います。
高価な豆を買わなければコーヒー好きとはいえない、ということはありません。
むしろ、インスタントコーヒーを含めて、いろいろなコーヒーの良さを認められる方が、楽しみ方の幅は広がるように感じます。
今日は専門店のコーヒーを飲みたい。明日はいつものインスタントコーヒーで十分。
そんな自由さがあってもいいのです。
コーヒーは、誰かに認めてもらうために飲むものではありません。
自分がおいしいと思う一杯を、自分の好きな時間に楽しむ。
結局のところ、それが一番自然なコーヒーの楽しみ方なのではないでしょうか。
