ドラマ『VIVANT(ヴィヴァン)』を見て、「なぜ日本のテレビ局は、こうしたスケールの大きな作品をもっと作らないのだろう」と感じた人も多いのではないでしょうか。海外での大規模ロケ、豪華俳優陣、先の読めないストーリー。従来の日本の連続ドラマとは一線を画す作品でした。
しかし、VIVANTのようなドラマが他では生まれにくい理由は、単純に制作費が足りないからではありません。テレビ局の制作体制、企画を実現する人材、事業上のリスク、そして視聴者の楽しみ方まで、複数の条件が関係しています。
2023年の第1シーズンと2026年に放送されている続編を踏まえながら、VIVANTが特別な作品になった理由と、同じようなドラマを日本で増やすことが難しい背景を考えていきます。
VIVANTのようなドラマが他では生まれない最大の理由
結論からいえば、VIVANTのようなドラマが生まれにくい最大の理由は、制作費、企画力、人材、時間、そして失敗を恐れず挑戦できる環境が同時に必要だからです。
日本のテレビ業界に優秀な脚本家や監督、俳優がいないわけではありません。むしろ個々の能力が高くても、それを一つの大規模作品に結集させることが難しいと考えられます。
制作費を増やすだけではVIVANTは再現できない
VIVANTの特徴として最初に挙げられるのが、映画のような映像のスケールです。2023年の第1シーズンでは、モンゴルで約2カ月半に及ぶ大規模ロケが行われました。
砂漠を舞台にした逃走劇や、大勢の人物が登場する場面など、通常の日本のテレビドラマではあまり見られない映像が次々と登場しました。
こうした撮影には多くの予算が必要です。しかし、海外に行って大勢のエキストラを集めれば、同じような作品になるわけではありません。
重要なのは、その映像が物語の面白さにつながっているかどうかです。VIVANTでは、主人公が異国の地で追われる状況そのものが緊張感を生み、視聴者を物語に引き込む役割を果たしていました。
映像に迫力があっても、ストーリーが退屈であれば視聴者は離れてしまいます。反対に、脚本が優れていても、それを映像として表現するための環境が整わなければ、企画の魅力を十分に生かせません。
VIVANTの特殊性は、予算と物語が比較的うまく結びついていた点にあると考えられます。
成功する保証がない作品に大きな投資をする難しさ
テレビ局にとって、大規模ドラマへの投資は大きな経営判断です。
一般的な連続ドラマであれば、過去のヒット作品、原作の知名度、出演者の人気などを参考にして、ある程度の視聴者層を想定できます。
ところが、VIVANTは完全オリジナル作品でした。放送前には物語の詳細もほとんど明かされておらず、どのようなジャンルなのかさえ視聴者には分かりにくい状態でした。
つまり、制作側はヒットを保証する材料が限られた状態で、大規模な企画に挑戦していたことになります。
2023年の初回世帯視聴率は11.5%でしたが、最終回には19.6%に上昇しました。いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区の数字です。最終回は同年の民放ドラマで特に高い記録を残しました。
結果的には成功しましたが、最終回の人気を制作開始前に確実に予測できたわけではありません。
ここが大きなポイントです。ヒットした後なら正しい判断に見えても、企画段階では失敗する可能性を抱えた投資だったのです。
テレビ局は作品の面白さだけで判断できない
民放テレビ局は、ドラマを制作するだけでなく、広告収入や編成全体のバランスも考える必要があります。
高額な制作費をかけた作品が必ずしも高い視聴率を獲得するとは限りません。話題にはなっても、投資に見合う収益が得られない可能性もあります。
放送枠を一つの大型作品に長期間使えば、その間に別の企画を放送する機会も失われます。これを経営上の機会損失と考えることもできます。
加えて、海外撮影では天候、交通、出演者の体調、現地の法律や撮影許可など、国内撮影とは異なるリスクが発生します。
こうした事情を考えると、テレビ局が比較的安定した制作方法を選ぶことには合理性があります。
ただし、同じ手法を続けることは、作品の安定につながる一方で、これまでにない挑戦を難しくする側面もあります。
VIVANTの制作費と海外ロケが他のドラマに与える壁
VIVANTのような作品が簡単に増えない理由を考えるうえで、撮影規模の問題は避けられません。ただし、制作費の金額だけを見ると、本当に難しい部分を見落としてしまいます。
モンゴルでの長期撮影は通常の連続ドラマと条件が違う
2023年の第1シーズンでは、モンゴルの広大な自然を使った撮影が大きな話題になりました。
飯田和孝プロデューサーは当時のインタビューで、モンゴル側のスタッフが200〜300人ほど関わったことを説明しています。
出典:マイナビニュース「VIVANT飯田和孝プロデューサーインタビュー」
海外で大規模な撮影を行う場合、カメラや照明の機材だけでなく、現地スタッフとの連携、通訳、車両、宿泊施設、食事、輸送なども手配しなければなりません。
しかも、砂漠のように撮影環境が厳しい地域では、天候や移動そのものがスケジュールに影響します。
通常の連続ドラマのように、国内のスタジオや比較的移動しやすいロケ地を中心に撮影する場合とは、必要な準備が大きく異なります。
海外ロケは映像の魅力を高める一方で、予定外の問題が発生したときに対応する余裕も必要になります。単に予算を確保するだけでは成立しない仕事なのです。
制作費の正確な金額よりも重要なこと
VIVANTについては、1話あたりの制作費が非常に高額だったという報道や推測が見られます。
ただし、作品全体の詳細な制作予算や、費用の内訳がすべて公表されているわけではありません。そのため、特定の金額を確定した事実として扱うことには注意が必要です。
福澤克雄監督は2023年のインタビューで、作品の収支について厳しい状況に触れています。一方、それをもって、配信や関連事業まで含めた最終的な損益が赤字だったと断定することはできません。
ドラマの価値は、放送時の広告収入だけで決まるとは限らないからです。
配信権の販売、海外展開、商品化、再放送などによって、放送後も収益が発生する可能性があります。
VIVANTは2023年12月からNetflixを通じて190以上の国と地域で配信されました。こうした展開は、テレビ放送を終えた後も作品に価値が残ることを示しています。
ただし、海外配信された事実と、制作費を完全に回収できたかどうかは別の問題です。
大切なのは、制作費が高いか安いかだけでなく、その投資をどれだけ長い期間、複数の事業で生かせるかという視点です。
俳優のスケジュールをそろえることも大きな負担
VIVANTには、堺雅人さん、阿部寛さん、二階堂ふみさん、松坂桃李さん、役所広司さん、二宮和也さんなど、数多くの実力派俳優が出演しています。
これだけの出演者を集めるだけでも簡単ではありません。俳優には映画、ドラマ、舞台、広告など、それぞれの仕事があります。
特に大規模な海外ロケを伴う作品では、通常の撮影よりも長期間のスケジュール調整が必要になる場合があります。
主演級の俳優を多数起用することは、出演料の問題だけでなく、撮影計画そのものを複雑にします。
しかも、VIVANTでは有名俳優が短い場面に登場するだけでなく、それぞれが物語の重要な役割を担っていました。
単純に知名度の高い俳優を集めても、全員に意味のある役割を与える脚本がなければ、その豪華さを十分に生かせません。
俳優の魅力と物語の設計を両立させることも、再現の難しい要素の一つです。
予算以上に不足しやすいのは制作に使える時間
高品質なドラマを制作するためには、脚本の調整、ロケ地の確認、撮影、美術、編集、音響など、多くの工程に時間が必要です。
予算があっても、準備期間が短ければ実現できることには限界があります。
2026年のVIVANT第2シーズンでは、アゼルバイジャンとタイで大規模ロケが行われました。TBSの制作スタッフへのインタビューによると、アゼルバイジャンでは担当者が3カ月半から4カ月ほど現地に滞在して準備や制作を進めています。
現地では日本からの参加者と現地スタッフ、出演者などを合わせた大規模な体制が組まれていました。
出典:TBS INNOVATION LAND「VIVANT第2シーズン制作秘話」
この事実からも、VIVANTの規模を支えているのは、放送直前の撮影作業だけではないことが分かります。
十分な準備期間を確保するには、通常の放送スケジュールとは異なる長期的な制作計画が必要になります。
福澤克雄監督とTBSの制作体制がVIVANTを特別にした
VIVANTの独自性を考えるとき、福澤克雄監督の存在と、TBSが蓄積してきたドラマ制作の経験は重要な要素です。
ただし、優秀な監督が一人いれば同じ作品を作れるという話ではありません。大規模な企画を実現するには、監督の構想を形にできる制作組織が必要です。
福澤克雄監督には大型ドラマの実績があった
福澤克雄監督は、『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』など、数多くのTBSドラマに携わってきました。
これらの作品には、登場人物の強い感情、対立関係、緊張感のある展開など、視聴者を引き込む演出上の共通点が見られます。
VIVANTは、それまでの企業ドラマとは異なる冒険・諜報ドラマですが、人物同士の対立を盛り上げる演出には福澤作品らしい特徴があります。
加えて、VIVANTでは福澤監督自身が原作を担当しています。2026年の第2シーズンでも、原作・演出・プロデュースを担っています。
監督が作品の基本構想に深く関わることで、物語と映像演出の方向性を共有しやすくなると考えられます。
もちろん、監督が原作を担当すれば必ず成功するわけではありません。しかし、VIVANTでは物語の構想と映像表現の一体感が、作品の特徴につながったと見ることができます。
TBSには大型ドラマを作ってきた経験の蓄積がある
見落とされやすいのが、テレビ局内部に残されている制作ノウハウです。
福澤監督は2023年のインタビューで、TBSには社員を中心にドラマを制作し、経験を次の世代に受け継ぐ仕組みがあると説明しています。
出典:マイナビニュース「福澤克雄監督が語るドラマ制作のノウハウ」
大規模な撮影では、監督だけでなく、助監督、撮影、美術、照明、制作進行など、多くのスタッフが高度な判断を求められます。
例えば、大勢のエキストラや動物が登場する場面、複数の車両を使う場面では、通常の会話劇とは異なる撮影管理が必要です。
こうした経験は、マニュアルを読むだけでは簡単に身につきません。実際の現場で問題を解決しながら蓄積される部分が大きいと考えられます。
VIVANTのような作品を制作できる背景には、過去のドラマで培われた技術や判断力が存在しているのです。
一人の天才よりもチーム全体の経験が重要
VIVANTの成功を福澤監督の才能だけで説明すると、重要な部分を見落としてしまいます。
第1シーズンでは、福澤監督のほかに宮崎陽平監督や加藤亜季子監督も演出に参加しました。脚本も複数の作家が担当しています。
大規模ドラマでは、中心となる人物が明確な構想を持ちながら、各部門の専門家がそれを具体的な形にしていく必要があります。
現場での問題を解決する判断力、俳優との信頼関係、海外スタッフとの連携などは、一人の能力だけでは補えません。
2026年の第2シーズンでは、第1シーズンから継続して参加するスタッフに加え、新たなメンバーも制作に携わっています。
これは、一度きりの大作を作るだけでなく、その制作経験を次の作品に生かす取り組みとしても捉えられます。
実際に新しい作品を生み出すには、著名な監督を招くだけでなく、その監督の構想を支えられるチームを育てることが重要でしょう。
挑戦を続けられる環境が作品の個性につながる
テレビドラマでは、視聴率や制作費、放送スケジュールなど、多くの条件が作品づくりに影響します。
関係者が増えるほど、それぞれの立場から意見が出るため、企画を調整する必要も生まれます。
そうした調整は作品の完成度を高める一方で、意見をまとめる過程で独創的な部分が弱くなる可能性もあります。
VIVANTのような、ジャンルを簡単に説明できない作品では、企画の方向性を維持しながら多くの関係者をまとめることが特に重要だったと考えられます。
また、挑戦には失敗の可能性が伴います。一度うまくいかなかった企画があっても、制作経験を次に生かせる環境がなければ、新しい試みは継続しにくくなります。
その意味で、VIVANTは一人の才能による例外的な成功であると同時に、TBSの制作体制が持つ強みを示した作品ともいえます。
VIVANTが他の日本ドラマと決定的に違ったのは物語の作り方
VIVANTの評価は、豪華な映像だけで決まったわけではありません。
作品を強く印象づけたのは、視聴者の予想を揺さぶる脚本と、登場人物の正体や目的を簡単には明かさない物語の構造でした。
一つのジャンルに収まらないストーリー展開
2023年の第1シーズンは、丸菱商事の社員である乃木憂助が、誤送金された140億円を取り戻すため海外へ向かうところから始まります。
序盤だけを見れば、企業を舞台にした事件解決ドラマのようにも感じられます。
しかし、物語は海外での逃走劇へと発展し、公安警察、謎の組織「別班」、テロ組織「テント」などが絡む複雑な展開へと変化していきます。
企業ドラマ、サスペンス、スパイアクション、家族ドラマといった複数の要素が、一つの物語に組み込まれていました。
通常のドラマでは、序盤で示されたジャンルやテーマが終盤まである程度維持されることが多くあります。
VIVANTでは、視聴者が理解していた作品の全体像が、話数を重ねるごとに変化していきました。
ただし、単純に展開を複雑にすれば面白くなるわけではありません。情報の出し方を間違えれば、視聴者が物語についていけなくなる可能性もあります。
その難しさを抱えながら、次の展開を知りたいと思わせ続けた点が特徴的です。
登場人物を簡単に信用できない構造
VIVANTでは、誰が味方で誰が敵なのかという疑問が、物語全体を動かす重要な要素になっています。
ある人物が信頼できるように見えても、次の展開では違った印象を与えることがあります。
視聴者は登場人物の表情や発言、何気ない行動から、本当の目的を考えなければなりません。
この構造によって、会話の場面にも緊張感が生まれます。
一般的なアクション作品では、銃撃戦や追跡などの派手な場面が大きな見どころになります。しかし、VIVANTでは静かな会話の中にも、立場が逆転する可能性を感じさせる面白さがありました。
また、堺雅人さんが演じる乃木憂助には、表の顔と裏の顔があり、さらに別人格のように現れる「F」の存在も描かれています。
主人公自身が簡単には理解できない人物だったことも、視聴者の関心を持続させる理由になったと考えられます。
複雑な謎の中心には感情のドラマがあった
VIVANTには、諜報活動や組織同士の争いなど、理解するために集中力が必要な要素が多く登場します。
それでも多くの視聴者を引きつけた理由の一つは、物語の中心に家族や愛情、信念といった分かりやすい感情が存在していたことでしょう。
第1シーズンでは、乃木の過去や家族との関係が、物語全体を理解するうえで重要な意味を持っていました。
組織の目的や国家間の事情が複雑でも、登場人物が何を守ろうとしているのか、誰を大切にしているのかという感情は伝わります。
この構造がなければ、VIVANTは単に設定の難しいスパイドラマになっていた可能性があります。
壮大な世界観を作りながら、最後には登場人物の感情に物語を結びつける。そこに脚本上の強みがあったと考えられます。
情報を隠す宣伝とSNSの考察が相乗効果を生んだ
VIVANTでは、放送前に物語や登場人物の詳細をほとんど公開しないという宣伝方法が採用されました。
通常のドラマでは、あらすじや人物関係を紹介して、放送前から視聴者の関心を集めようとします。
しかし、VIVANTは情報を限定することで、視聴者が実際に第1話を見て初めて作品の内容を理解する形になりました。
放送が始まると、SNSでは登場人物の正体、組織の目的、物語の伏線などについて、多くの考察が交わされました。
興味深いのは、福澤監督がインタビューで、ここまでの考察の盛り上がりは想定外だったと語っていることです。
つまり、制作側が用意した謎の多い構造と、視聴者が自発的に考察を楽しむ文化が結びついたことで、想定を超える広がりが生まれたと考えられます。
毎週決まった時間に新しいエピソードが放送されることで、視聴者が同じタイミングで予想を語り合える環境もありました。
作品を見るだけでなく、次の放送まで考える時間を楽しむ。VIVANTは、そのような視聴体験を生み出したドラマでした。
他局や動画配信サービスでもVIVANT級のドラマは作れるのか
では、VIVANTのような作品を制作できるのはTBSだけなのでしょうか。
そのように断定することはできません。日本でも動画配信サービスを中心に、大規模な作品づくりが進んでいます。ただし、地上波テレビと配信サービスでは事業の仕組みが異なります。
地上波テレビと動画配信では投資の考え方が違う
民放の地上波ドラマは、広告収入を重要な収益源としています。放送時間が決まっているため、幅広い視聴者に見てもらえることも重要です。
一方、Netflixなどの定額制動画配信サービスでは、会員の獲得や継続利用、作品の魅力を高めることなどが事業上の重要な要素になります。
どちらが優れているということではなく、作品への投資を判断する基準が異なります。
| 比較項目 | 地上波の民放ドラマ | 定額制動画配信ドラマ |
|---|---|---|
| 主な収益構造 | 広告収入を中心に配信や関連事業も活用 | 月額会費を中心としたサービス運営 |
| 視聴の仕組み | 決まった時間に放送する形式が基本 | 利用者が好きな時間に視聴できる |
| 作品の評価 | 視聴率や配信実績、広告価値など | 視聴状況や会員への貢献など |
| 制作上の特徴 | 定期的な放送枠や編成との調整が必要 | 作品ごとに話数や配信方法を設計しやすい |
| 主な課題 | 広告収入と制作費のバランス | 作品投資と会員獲得・維持のバランス |
動画配信サービスでは、作品によって海外市場を最初から意識した制作が可能です。
例えばNetflixの『地面師たち』や『イクサガミ』は、日本発の作品として独自の世界観を展開しています。
特に2025年に配信された『イクサガミ』は、Netflixの週間グローバルTOP10の非英語シリーズ部門で1位を記録しました。
こうした作品を見ると、日本に大規模なエンターテインメントを生み出す能力がないとはいえません。
むしろ、制作できる作品の規模や方向性は、どのような事業環境で企画を実現するかによって変わると考えるほうが自然です。
VIVANTが地上波で放送された意味は大きい
VIVANTの特徴は、配信サービスのオリジナル作品ではなく、TBSの日曜劇場として放送されたことにもあります。
地上波ドラマは、放送開始まで作品の存在を知らなかった人が偶然見る可能性があります。
また、家族で視聴したり、翌日に学校や職場で話題にしたりと、幅広い人に共有されやすい特徴もあります。
特にVIVANTでは、毎週日曜夜9時の放送を中心に、SNSで考察が盛り上がるという流れが生まれました。
一方、全話を一度に配信する形式では、視聴者によって見終わるタイミングが異なるため、同じ謎について数週間にわたって予想を重ねる体験は生まれにくい場合があります。
ただし、配信作品でも話数を分けて公開すれば、同様の盛り上がりを作れる可能性があります。
VIVANTの場合は、作品の構造と毎週の放送方式がうまくかみ合った点が重要だったといえるでしょう。
2026年の続編が示したVIVANTの特殊性
VIVANTは2023年の成功で終わった作品ではありません。2026年7月26日から、第2シーズンがTBS日曜劇場で放送されています。
今回の続編は、日曜劇場としては異例の2クール連続放送となりました。前作のラストシーンから続く物語が描かれています。
海外ロケもさらに拡大し、アゼルバイジャンやタイなどで撮影が行われました。
TBSの制作スタッフへのインタビューでは、第1シーズンから約3年をかけて第2シーズンの準備が進められていたことも説明されています。
また、ドラムやチンギスを中心にしたサイドストーリーがU-NEXTで配信されるなど、本編以外の展開も行われています。
ここから見えてくるのは、VIVANTが単独の連続ドラマという枠を超え、継続的に展開できる作品へと成長していることです。
続編に長い準備期間を設け、複数の国で撮影し、関連作品まで展開する方法は、すべてのドラマで採用できるものではありません。
むしろ、2026年の続編が大規模になったこと自体が、VIVANTの制作環境の特殊性を示しているとも考えられます。
それでもVIVANTのようなドラマが今後生まれる可能性はある
ここまでの理由を考えると、日本ではVIVANTのような作品が二度と生まれないという結論にはなりません。
動画配信の普及によって、国内のテレビ放送だけではなく、海外の視聴者を対象にした作品づくりも可能になっています。
制作技術の進歩によって、かつては実現が難しかった映像表現にも新しい選択肢が生まれています。
実際に2026年のVIVANT第2シーズンでは、Googleの映像生成AI「Veo 3」を制作の一部に活用しています。TBSは、作業を効率化して制作者が創造的な仕事に集中できる時間を増やすことを目的の一つとして説明しています。
出典:TBS INNOVATION LAND「VIVANT続編での生成AI活用」
ただし、技術の進歩だけで優れた作品が生まれるわけではありません。映像表現が容易になっても、魅力的な人物や物語を作る重要性は変わりません。
今後必要なのは、VIVANTの海外ロケや豪華キャストをそのまま模倣することではないでしょう。
例えば、海外を舞台にしなくても、日本国内の知られていない世界を描くことで、視聴者に新鮮な驚きを与える作品は作れるはずです。
重要なのは、企画に合わせて適切な予算と時間を確保し、作品の個性を最後まで生かせる制作環境を整えることです。
その条件が整えば、VIVANTとはまったく異なる方法で、同じくらい強い印象を残すドラマが生まれる可能性は十分にあります。
まとめ|VIVANTのようなドラマが他では生まれにくいのは複数の条件が重なるから
VIVANTのようなドラマが他では生まれにくい理由は、単純な制作費不足や、日本のドラマ制作者の能力不足では説明できません。
大規模な海外撮影に必要な予算と時間、福澤克雄監督の企画力、TBSが培ってきた制作ノウハウ、豪華俳優陣との協力、そして視聴者の予想を超える脚本が、一つの作品の中で結びついていたことが大きな特徴です。
さらに、地上波の日曜劇場という放送環境と、SNSで考察を楽しむ視聴者の文化が重なったことも、VIVANTの人気を支える要因になりました。
2026年の続編が異例の2クール連続放送として制作されたことからも、こうした大規模な作品を実現するには、長期的な準備と継続的な投資が必要であることが分かります。
一方、動画配信サービスでは日本発の大型作品も登場しており、VIVANTだけが特別な可能性を持つわけではありません。
VIVANTの本当の特別さは、お金をかけたことではなく、前例の少ない企画を実現できるだけの人材、技術、時間、組織的な判断がそろっていたことにあります。
日本のドラマに必要なのは、VIVANTと同じ作品を増やすことではなく、VIVANTのように新しい挑戦ができる環境を広げることなのかもしれません。

