どこの大学を選ぶか。高校生にとって、これほど難しい問題はなかなかありません。大学選びは将来を左右する大きな決断だと言われます。しかし、まだ社会に出たこともなく、自分がどんな仕事をしたいのかさえはっきりしていない高校生に、数年先の人生を考えて進学先を決めるよう求めるのは、あまりにも難しい話ではないでしょうか。
高校生の段階で将来の自分を具体的に想像できている人は、決して多くないはずです。むしろ、大学に入ってから興味が変わったり、社会人になって初めて自分の向き不向きに気づいたりすることもあります。
大学選びが難しいのは、単に情報が足りないからではありません。まだ知らない未来の自分について、今の自分が決断しなければならないからです。この問題がどれほど難しいものなのか、進路を選ぶ高校生の立場から考えてみます。
どこの大学を選ぶかは、高校生には難しすぎる問題です
大学選びについては、「将来やりたいことから逆算して考えよう」「自分に合った学部を選ぼう」といったアドバイスがよく聞かれます。もちろん、考え方としては間違っていません。
しかし、そもそも将来やりたいことがわからない場合はどうすればよいのでしょうか。自分に合っている仕事を知らなければ、そこから逆算することもできません。
大学選びが本当に難しいのは、判断するために必要な経験をまだ持っていない高校生が、大きな決断をしなければならないところです。
社会に出たことがないのに将来の仕事を決めなければならない
高校生が知っている職業は、世の中に存在する仕事のごく一部ではないでしょうか。学校の先生、医師、看護師、公務員、会社員など、名前を知っている職業はあっても、その仕事内容まで理解しているとは限りません。
例えば、会社員といっても営業、経理、人事、企画、開発、広報など、仕事の内容は大きく異なります。さらに、同じ職種でも会社によって働き方や求められる能力は変わります。
実際に働いた経験がなければ、毎日どのようなことをするのか、何にやりがいを感じるのか、どんな苦労があるのかを想像するのは簡単ではありません。
それにもかかわらず、高校生は将来の職業を意識しながら、大学や学部を選ぶよう求められます。十分に知らない世界について決断しなければならないのですから、難しくて当然です。
18歳の自分が22歳や25歳の自分を理解しているとは限らない
高校3年生の自分と、大学を卒業する22歳の自分が、同じことに興味を持っているとは限りません。まして、社会人になった25歳の自分が何を大切にしているかまで予測することは困難です。
高校時代は数学が嫌いだった人が、大学でデータ分析の面白さに気づくかもしれません。逆に、英語が得意だから外国語学部を選んだものの、勉強を進めるうちに別の分野へ興味が移ることも考えられます。
人間の興味や価値観は、さまざまな経験を通じて変化します。それは決して珍しいことではありません。
ところが、大学受験の段階では、まだ変化する前の自分を基準に進路を決めなければなりません。言い換えれば、未来の自分がどのような人間になるのかわからないまま、未来の自分のために選択しているのです。
この難しさは、進路情報をどれほど集めても完全には解消できません。
将来を正確に見通せる高校生は、そう多くないはずです
高校生の中には、早い段階から進みたい道が明確な人もいます。小さい頃から医師を目指していたり、ものづくりが好きで工学部への進学を決めていたりする人です。
そうした人たちは、目標が定まっているという点で進路を考えやすいでしょう。ただし、目標が明確であることと、実際の将来を正確に見通せていることは別です。
大学に入ってから学問の難しさを知ることもありますし、仕事を始めてから理想と現実の違いに気づくこともあります。
まして、大学進学の時点で将来の仕事内容、働く場所、生活環境、収入、価値観まで具体的に予想できている高校生は、かなり限られるのではないでしょうか。
大人でさえ5年後や10年後の自分の人生を正確に予測することはできません。高校生だけに将来を見通した選択を求めるのは、相当に難しい要求だと感じます。
大学選びが難しいのは、人生への影響が大きいからです
大学は、単に4年間勉強する場所ではありません。進学先によって学ぶ内容、出会う人、暮らす地域、卒業後の進路などが変わる可能性があります。
そのため、大学選びは高校生にとって非常に重い決断になります。しかも、何を重視すれば正解なのかが明確ではありません。
大学の名前と学びたい内容のどちらを優先するべきなのか
例えば、次のような選択を迫られた場合を考えてみます。
ある大学は知名度が高く、就職活動でも名前を知ってもらいやすそうです。しかし、学部の授業内容にはそれほど興味がありません。
別の大学は全国的な知名度こそ高くありませんが、自分が面白そうだと思う分野を専門的に学べます。
この2つなら、どちらを選ぶのが正しいのでしょうか。
学びたい内容を重視する考え方もありますし、卒業後の選択肢を考えて大学の知名度を評価する考え方もあります。どちらにも理由があります。
しかも、入学してみなければ、授業への満足度や学生生活の充実度はわかりません。卒業時にどのような企業へ就職したくなるかも不明です。
こうした問題に、高校生の時点で誰にでも当てはまる正解を出すことはできないでしょう。
大学には多額のお金と長い時間がかかる
大学進学には授業料や入学金がかかります。自宅から通えない大学なら、家賃や生活費も必要です。
そのため、大学選びは本人の希望だけで決められるものではありません。家庭の経済状況によって、進学できる地域や大学が限られることもあります。
仮に入学後に別の分野を学びたくなっても、簡単に転学や再入学ができるとは限りません。追加の費用や時間がかかる場合もあります。
つまり、高校生は数年間の時間と大きな費用が必要になる選択を、将来の見通しが十分に立たない段階で行わなければならないのです。
もちろん、大学進学の価値は金額だけで測れるものではありません。しかし、費用の負担が現実に存在する以上、「とりあえず入学して考えればいい」と簡単には言えないでしょう。
偏差値で比較できても、人生との相性は数字で比較できない
大学受験では偏差値や入試難易度がよく使われます。これらは合格の可能性を考えるうえで役立つ指標です。
しかし、偏差値が高い大学に進めば、必ず充実した学生生活を送れるわけではありません。反対に、偏差値がそれほど高くない大学だからといって、将来の可能性が小さいとも限りません。
大学で何を学びたいのか、どんな環境なら努力を続けられるのか、卒業後に何をしたいのか。こうしたことは、偏差値だけでは判断できません。
高校生にとって厄介なのは、入試の難しさには数字があるのに、自分の人生との相性には明確な数字がないことです。
結果として、比較しやすい偏差値や知名度を中心に大学を選ぶ人がいても不思議ではありません。それが必ずしも本人の考えが浅いことを意味するわけではないのです。
将来やりたいことが決まっていない高校生は珍しくありません
高校生になると、進路希望調査や三者面談などで将来の希望を聞かれる機会が増えます。
周囲の友人が志望学部を決め始めると、まだ何も決まっていない自分に焦りを感じることもあるでしょう。しかし、進路を決められないことと、将来について真剣に考えていないことは同じではありません。
進路選択の調査でも、やりたいことがわからない人は一定数います
リクルート進学総研が公表した「進学センサス2025」では、進学先の検討時に「将来やりたいことがわからない」「自分の興味や適性がわからない」と感じていた人が、それぞれ3割前後いたと報告されています。
これは調査対象者の進路検討時の意識を示すもので、すべての高校生の状況をそのまま表す数字ではありません。それでも、自分の将来や適性がわからず悩む人が一定数いることは確認できます。
出典:リクルート進学総研「高校生の進路選択に関する調査(進学センサス2025)」
ただし、ここで重要なのは、進路を決めている人が将来を正確に理解しているとは限らないことです。
大学名や学部名をすでに決めている高校生でも、その選択が数年後の自分に合っているかどうかは、まだわかりません。
志望校が決まっていることと、人生の方向性を見通せていることは、分けて考える必要があります。
「好きなことを仕事にしよう」と言われても簡単ではない
大学選びでよく使われる助言に、「好きなことを基準に選べばいい」というものがあります。
しかし、高校生の好きなことが、そのまま将来の職業につながるとは限りません。
例えば、ゲームが好きだからといって、ゲーム制作の仕事が自分に合うとは限りません。ゲームを楽しむことと、プログラムを作ったり、仕様を考えたり、制作日程を管理したりすることは別だからです。
同じように、旅行が好きな人が観光業の仕事を楽しめるとは限りません。歴史が好きでも、大学で行う研究の方法には興味を持てない可能性があります。
好きなことは、大学選びの大切な手がかりになります。ただ、それだけで4年間の学習内容や将来の仕事まで決めるのは難しいものです。
そもそも、まだ経験していないことの中に、自分が本当に好きになる分野があるかもしれません。
高校時代に得意だった科目が、その後の適性を決めるわけではない
「国語が得意だから文学部」「数学が得意だから理工学部」といった選び方も、一つの方法です。しかし、学校の教科と大学で学ぶ専門分野は必ずしも同じではありません。
高校の数学が得意でも、大学の数学で扱う抽象的な考え方に戸惑うことがあります。反対に、高校の社会科では目立たなかった人が、大学で法律や経済の面白さに気づく場合もあるでしょう。
高校時代の成績は、これまで学んだ内容に対する得意不得意を知る材料にはなります。ただし、まだ学んでいない専門分野への適性まで、すべて教えてくれるわけではありません。
高校までの学習経験だけを材料に、自分の将来の能力や興味を判断しなければならない。これも大学選びを難しくしている理由です。
大学選びで完璧な正解を探すことには限界があります
大学選びが難しいからといって、何も考えずに進学先を決めてよいわけではありません。学部によって学べる内容は異なりますし、将来の職業によっては必要な資格や指定された教育課程もあります。
ただ、最初から人生の正解を一つ見つけようとすると、かえって決められなくなることがあります。現実的には、今わかっていることを整理し、避けたい失敗を減らす考え方が役立ちます。
「やりたいこと」だけでなく「続けられそうなこと」を考える
大学では、興味のあるテーマだけを自由に勉強できるとは限りません。学部によって必修科目が決められており、苦手な内容を学ぶ必要がある場合もあります。
例えば、心理学に興味があっても、大学では統計や研究方法を学ぶことがあります。情報系の学部なら、プログラミングだけでなく数学的な知識が必要になることもあります。
そのため、大学を選ぶときは「面白そう」という気持ちに加えて、「この分野を数年間学び続けられそうか」と考えることも大切です。
もちろん、高校生の時点で正確に判断することはできません。それでも、授業内容を見て、極端に苦手な分野ばかりになっていないかを確かめることはできます。
強い情熱が見つからなくても、興味があり、ある程度は努力を続けられそうな分野を選ぶという方法は十分に現実的です。
将来が決まっていないなら、選択肢の広さも考える
まだ将来の仕事が決まっていない場合、大学で学びながら方向性を考えられる環境は魅力的です。
例えば、複数の分野にまたがる授業を履修できる大学や、入学後に専攻を選べる制度のある大学なら、学びながら興味を確かめられる可能性があります。
ただし、学部名が幅広い印象だからといって、自由に専門分野を選べるとは限りません。実際の履修条件や定員、専攻の決定方法を確認する必要があります。
また、特定の職業を目指す場合は事情が異なります。医師や看護師など、資格取得に指定された教育課程が必要な職業では、進学先の選択が特に重要になります。
将来が明確な人には専門性を優先する選び方が合う場合がありますし、まだ方向性を探している人には、学ぶ分野を広げやすい環境が合う場合もあります。
どちらが優れているということではなく、今の自分にどの程度の方向性が見えているかによって、大学選びの基準も変わるということです。
大学選びで何を優先するかは人によって違います
進学先を決めるときには、学びたい内容以外にも考えるべきことがあります。整理すると、次のようになります。
| 重視すること | 考えられるメリット | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 学びたい分野 | 興味を持って勉強しやすい | 将来、興味が変わる可能性がある |
| 大学の知名度 | 大学を知っている人が多く、進路によっては評価につながる場合がある | 知名度だけでは授業との相性はわからない |
| 幅広く学べる環境 | 入学後に興味を探しやすい | 専門分野の選択に制限がある場合もある |
| 学費や生活費 | 家庭の負担を抑えやすい | 費用だけで選ぶと希望する学びから離れることがある |
| 就職実績 | 卒業後の進路を具体的に考えやすい | 就職率だけでは仕事内容や満足度はわからない |
| 通学や生活環境 | 無理なく学生生活を送りやすい | 環境の良さだけでは学習内容を判断できない |
どの項目も無視できません。しかし、すべての条件を完全に満たす大学を見つけるのは難しいでしょう。
自分にとって何が最も大切で、どこなら妥協できるのかを考える必要があります。ただし、その優先順位さえ、高校生の段階でははっきりしない場合があります。
大学選びの難しさは、選択肢が多いことだけではありません。何を大切にするべきなのかも、まだ確定していないところにあるのです。
正解の大学よりも、明らかなミスマッチを避けるという考え方
将来を完璧に予測できないのであれば、まずは現時点でわかる問題を減らすことが現実的です。
例えば、4年間の学費を負担できる見通しがない、履修する科目の大半に興味が持てない、希望する資格の取得に必要な課程が設けられていない、といった問題は入学前に確認できます。
反対に、入学後にどの友人と出会うのか、どの先生の授業に影響を受けるのか、卒業時にどんな仕事をしたくなるのかは、事前にはわかりません。
この違いを意識すれば、大学選びでどこまで考えるべきかが少し整理できます。
もちろん、それでも後悔する可能性はあります。しかし、未来を正確に予測できない以上、後悔の可能性を完全になくすことは誰にもできません。
高校生が限られた経験で大学を選ぶためにできること
大学選びにはどうしても不確かな部分が残ります。それでも、情報を集めたり、実際の大学生活を知ったりすることで、思い込みによる判断を減らすことはできます。
大切なのは、調べれば必ず正解が見つかると考えるのではなく、判断できる部分と判断できない部分を分けることです。
大学名よりも実際に何を勉強するのかを調べる
大学のパンフレットを見ると、魅力的な写真や将来の可能性が紹介されています。しかし、大学生活の中心となる授業が自分に合うかどうかは、宣伝用の説明だけでは判断できません。
確認したいのは、学部のカリキュラムです。カリキュラムとは、どのような科目を、どの順番で学ぶのかを示したものです。
例えば、経済学部でも数学や統計を重視する大学があれば、経済政策や社会問題に関する授業が充実している大学もあります。同じ学部名でも学べる内容は必ずしも同じではありません。
大学の公式サイトにある授業科目一覧やシラバスを見れば、実際の学習内容をある程度確認できます。シラバスは授業の目的や内容、評価方法などをまとめた資料です。
大学の比較には、教育内容や進路、学費などの情報を掲載している大学ポートレートも参考になります。ただし、掲載状況は大学によって異なるため、最終的には志望大学の公式情報を確認することが大切です。
オープンキャンパスでは大学生活の現実を見る
オープンキャンパスは、大学の雰囲気を知る機会です。建物や設備を見るだけでなく、模擬授業を受けたり、在学生に質問したりできる場合もあります。
特に役立つのは、大学の良いところだけでなく、普段の生活を具体的に聞いてみることです。
例えば、授業の予習や課題にどのくらい時間がかかるのか、必修科目には何があるのか、入学前の想像と違ったことはないか、といった質問です。
ただし、オープンキャンパスで楽しかったからといって、4年間の大学生活が必ず充実するとは限りません。反対に、一度訪問して印象が薄かった大学が、自分に合わないとも言い切れません。
一回の訪問ですべてを判断するのではなく、公式情報ではわからなかった部分を確かめる機会として活用するのがよいでしょう。
社会人の話を聞くと、仕事についての思い込みを減らせる
高校生が将来の仕事を考えにくい理由の一つは、実際の仕事内容を知る機会が限られていることです。
そこで、身近な社会人に仕事の話を聞いてみるのも一つの方法です。親や親戚だけでなく、学校の卒業生、地域で働く人などから話を聞ける場合もあります。
聞く内容は、仕事内容だけでなく、仕事を選んだ理由や、学生時代に想像していた仕事との違いなどでもよいでしょう。
特に興味深いのは、「高校生の頃に考えていた進路と、現在の仕事がどれくらい違うか」という質問です。
文部科学省の「中学校・高等学校キャリア教育の手引き」でも、社会や職業への理解を深めることや、体験的な学習を通じて進路について考えることの重要性が示されています。
もっとも、社会人一人の経験がすべての人に当てはまるわけではありません。できれば異なる仕事をしている複数の人の話を聞くと、働き方にはさまざまな形があることを理解しやすくなります。
学費や生活費は将来の予測ではなく現実の条件として確認する
大学選びでは将来について不確かなことが多い一方で、進学に必要な費用は比較的具体的に調べられます。
授業料や入学金だけでなく、交通費、教材費、下宿する場合の家賃や生活費なども含めて考える必要があります。
また、奨学金や授業料の減免制度を利用できる可能性も確認しておきたいところです。
文部科学省の高等教育の修学支援新制度では、対象となる学生について授業料・入学金の減免や給付型奨学金による支援が設けられています。対象となる条件や支援内容は制度によって異なるため、進学予定年度の公式案内を確かめる必要があります。
経済的な事情は、高校生本人の努力だけでは変えられない部分もあります。そのため、家庭で現実的に負担できる金額を早めに共有することが重要です。
将来の仕事は予測できなくても、現時点で確認できる費用や制度については、できる限り正確に把握しておきたいものです。
大人は高校生に大学選びの正解を求めすぎていないでしょうか
大学選びの難しさを考えるとき、高校生本人だけでなく、周囲の大人の姿勢についても考える必要があります。
親や先生は、本人の将来を心配するからこそ、早く志望校を決めてほしいと思うのでしょう。しかし、善意のアドバイスであっても、高校生にとっては大きなプレッシャーになる場合があります。
「将来何になりたいの?」という質問は簡単なようで難しい
高校生に対して、「将来何になりたいの?」と尋ねることがあります。日常的によく使われる質問ですが、よく考えると非常に難しい問いです。
自分が世の中のどんな仕事に向いているのか、何をしていると充実感を得られるのか、どのような生活を望むのか。こうしたことを理解していなければ、具体的な答えは出しにくいでしょう。
それなのに、答えられないと「まだ将来のことを考えていないのか」と受け取られる場合があります。
しかし、答えが出ないのは、真剣に考えていないからとは限りません。むしろ、さまざまな可能性を考えるほど、簡単には決められなくなることもあります。
自分が何をしたいのかわからないという状態を、努力不足や意識の低さと結びつけるべきではないでしょう。
親や先生の経験が、そのまま現在の高校生に当てはまるとは限らない
親や先生には、高校生よりも長い人生経験があります。そのため、進路について助言できることは多いでしょう。
ただし、大学選びの価値観は人によって異なります。知名度の高い大学を優先したほうがよいと考える人もいれば、専門的な勉強を重視する人もいます。
そして、何を重視するべきかは、本人の希望や家庭の事情、目指す職業によって変わります。
大人が自分の経験をもとに助言すること自体は悪くありません。しかし、その経験だけで高校生の進路を決めてしまうと、本人の気持ちや適性が置き去りになるおそれがあります。
例えば、「この大学なら安心だ」と言われても、本人が興味を持てない学部であれば、入学後に苦労するかもしれません。
反対に、本人が希望する大学について、大人が知らないという理由だけで否定してしまうのも適切ではないでしょう。
大人に求められるのは、必ず正解を教えることではなく、高校生が考えるために必要な情報や経験を補うことではないでしょうか。
必要なのは決断を急がせることだけではなく、一緒に考えること
受験には出願期限がありますから、いつまでも進学先を決めずにいることはできません。現実には、限られた時間の中で決断する必要があります。
だからこそ、周囲の大人には、正解を押しつけるのではなく、考えを整理する手助けをしてほしいものです。
「将来何になりたいのか」と答えを求めるだけでなく、「どんな授業が面白そうか」「何を勉強するのは苦痛ではないか」「どんな生活を送りたいか」と質問してみる方法もあります。
将来の職業が決まっていなくても、身近な興味や希望なら話せる高校生もいるでしょう。
また、進路を決めるための話し合いでは、本人が何を不安に感じているのかを聞くことも重要です。学費が心配なのか、興味のある分野がないのか、親の期待に応えられないことが怖いのかによって、必要な支援は異なります。
本人が納得できるまで考える機会を持つことと、出願期限に間に合うよう現実的な判断をすることは、両立させたいところです。
大学に入った後も人生は変わるという視点を忘れたくありません
大学選びでは、どこへ進学するかに大きな注目が集まります。しかし、大学に入った瞬間に人生のすべてが決まるわけではありません。
もちろん、進学先によって学べることや目指せる資格には違いがあります。それでも、大学入学後に経験することや、本人がどのように行動するかによって、将来の方向性は変わっていきます。
入学後に新しい興味が見つかることもある
高校までの生活では出会わなかった学問に、大学で初めて触れることがあります。
例えば、経済学を学ぶつもりで進学した人が、データ分析に興味を持つかもしれません。文学を学んでいた人が、授業を通じて教育や出版の仕事に関心を持つことも考えられます。
部活動やサークル、アルバイトなどの経験から、将来やりたい仕事が見えてくることもあるでしょう。
大学生活には、入学前には想像していなかった出会いや経験があります。高校生の頃に考えた進路と、卒業時に希望する進路が異なっていても不自然ではありません。
むしろ、大学で新しいことを知った結果として考えが変わるのは、学んできたからこその変化とも言えます。
大学選びの後悔は、必ずしも選択の失敗とは限らない
大学に入った後で、「別の学部にしておけばよかった」と感じることはあるかもしれません。
しかし、その感情だけで高校生の頃の選択が間違っていたと断定することはできません。当時は知らなかったことを大学で知ったからこそ、別の道に興味が生まれた可能性もあります。
ここには難しい問題があります。高校生の頃に持っていた情報だけで選んだ大学を、何年も後に得た知識や経験で評価することになるからです。
例えば、大学で初めて特定の仕事を知り、その仕事に就きたいと考えるようになった場合、高校生の段階でその希望を予測するのは無理があったでしょう。
もちろん、事前に調べれば避けられた失敗もあります。それでも、将来の興味の変化まで予測できなかったことを、すべて本人の判断ミスとするのは適切ではありません。
大学選びは大切ですが、一度の決断だけで人生を考える必要はありません
進学先を選ぶことは、人生に影響する大きな決断です。その重要性を軽く考えるべきではありません。
ただし、大学に入った後も、自分の進路について考える機会はあります。履修する科目を工夫したり、学外で経験を積んだり、卒業後に新しい分野を学んだりすることもできます。
場合によっては、転学や進路変更を検討する人もいるでしょう。ただし、制度上の条件や費用、時間の負担があるため、誰でも簡単に変更できるわけではありません。
大切なのは、進路変更が可能だから大学を適当に選んでよいということではなく、大学選びだけで人生のすべてが決定するわけではないと理解することです。
高校生の段階で一生分の正解を出す必要はありません。今わかる範囲で考えて選び、その後も自分の進路を考え続けることが現実的なのではないでしょうか。
まとめ|高校生に将来を見通した大学選びを求めるのは難しすぎます
どこの大学を選ぶかという問題は、高校生にとって本当に難しいものです。社会に出た経験がほとんどない段階で、将来の職業や生活を想像し、数年間の時間と費用をかける進学先を決めなければならないからです。
高校生の頃から目標が明確な人もいます。しかし、実際に社会人になった自分が何を大切にし、どのような仕事をしたいと思うのかまで正確に見通せる人は、そう多くないでしょう。
それでも進学先は決めなければなりません。だからこそ、完璧な正解を探すのではなく、学ぶ内容や費用、生活環境など、今わかる条件を確認しながら納得できる選択をすることが大切です。
そして、親や先生をはじめとする周囲の大人にも、この問題の難しさを理解してほしいと思います。進路が決まらない高校生を、考えが足りないと簡単に評価するべきではありません。
18歳の自分が、これから先の人生をすべて理解できているはずはありません。大人になってからようやくわかることも、経験して初めて気づくこともあります。
大学選びは重要です。しかし、重要だからこそ難しいのです。まだ人生の限られた部分しか経験していない高校生に、将来を完全に見通した決断を求めること自体に無理があります。
大学を選ぶときに迷ったり、将来の夢を答えられなかったりすることは、決しておかしなことではありません。その難しさを認めたうえで、限られた情報の中から自分なりに納得できる道を選ぶ。それが、高校生に求められる現実的な大学選びの姿なのではないでしょうか。

